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diary Sa, 03. Juli 2004

ジェニャのアングロサクソン講義とビルト紙

ジェニャは、ほんとによく歴史を知っていて、特にヨーロッパの歴史、どうやって民族が分かれていったのか、それによってどんな伝統をその民族が持っているのか、などなどなど、事細かに「講義」してくれ、それがほんとに興味深く、また、その土地にいて聞くその土地の歴史は大変に臨場感があって、楽しんでいます。

例えば、今のイギリス・アメリカ・オーストラリアなどに広まっているアングロ・サクソン人は、元々はこのドイツ(当時はドイツじゃなくってゲルマニアなんていうのかな)にゲルマン人と共にいて、「アンゲル・ザクセン」とこちらで言われるのを見ても分かるように、もともとは今のザクセン地方に生息していたそうです。それが、グロースブリテンの島に渡り、アメリカのインディアンみたいに、元々住んでいたスコットランド民族やらウェールズ民族などを征服していったのだということです。しかし、彼らアングロサクソンはアイルランドまで広がることはできなかったのですが、彼らにアイルランド語の代わりに英語を強要することに成功したということなのですって。

なぜ、アングロ・サクソンが、アメリカへ、オーストラリアへ、と渡ってどんどん開拓していくのか、ということですが、ちょっと乱暴な言い方になりますが、それが彼らの伝統、習性なのですね。そこに留まってコツコツ型じゃなくって、もっと先、もっと広がろう、一つのところに収まらない、みたいな。

で、その伝統ってのは、例えばビジネスのやり方やジャーナリズムなどにも、特徴的に反映されているのだそうです。

例えば、ビジネスの点では、彼らにとって大企業というものが最重要であるということ。中小企業を買い占めて、とにかく大会社にする。そのためには手段を選ばない、というような構図。

ドイツは今までは、家族でやってるような一つ一つ手作りの子会社で成り立っていたそうです。お父さんが作った会社を息子が引き継いで、顔の見える商売をして、そんなに資産はないけれど一人一人が幸福で満足するような、そういう仕組みだったのだそうですが、今はどんどんそのイギリス・アメリカ型の大企業に移行していっているということ。

この話を聞いて、まさに新開拓地に突き進んで、戦争をして、領土を奪って来た、その民族のやり方そのものと共通しているのではないかと私は思いました。

報道についてですが、例えばインタビューをする場合、イギリスやアメリカのやり方だと、インタビューされる側には、書かれた記事をチェックする権利がないのです。つまり、彼らの中では、経験豊富なインタビュアーがそれと知られずにインタビューをして、それを独断と偏見で、悪くもよくも書いてしまえるということ。それに大して事前に承諾を得るということはない。

しかしドイツでは、もくろみの見える状態で批判的な質問などされ、記事は最終的に相手に見せ、是非を問う、と、そのやり方が攻撃的でないということだそうです。

話が乱暴になり、大きくなりすぎでこじ付けがましいですが、どうしていつもアメリカが頼まれてもいない望まれない他の国の面倒を見たがるのか(そこにアメリカの利益があるからですが)、というのに、この方面からもアプローチすることも可能なのかもしれない。民族的な性格なんて、本当はあってないようなもの、ともいえるけれども、それでも、絶対にヨーロッパの他の民族は、そういう風にはものを考えないから。

話は変わって、欧州トップの売り上げ、一日4百万部以上の大新聞がありまして、それはBildという新聞です。つまり、一般的なドイツ人がこの新聞を読んでいるということですね。これは大衆紙で、そこら辺に売ってまして、定期購読はありません(一部ドイツ感覚で80円なんて感じ。包装紙に包んでもらうより安い)。

Bildは、第二次大戦後Axel Springerという人物が起こした出版社の新聞で、ドイツで始めて、そのアングロサクソン的ジャーナリズムの手法を取り入れた出版社なのだそうです。今もそのさきがけです。

そしてそもそもこの人物は、報道を通して、なんとなんと、「自らの思想を」販売しようと始められたということです。

つまり、この新聞が興味深いのは、一見ニュートラルで真実を報道しているように見せかけていますが、徹底してこのSpringer氏の思想、右保守(CDUSPD)体制であること、そして、驚くべきことに、Bildに掲載されているコラムや記事には著者の名前がたびたびなく、コラムに書かれている意見=Bildの思想、ということになっているということです。

普通の新聞でいくと、記事自体がニュートラルな事実である代わりに、コラムにはジャーナリストの「意見」が書いてありますよね。で、そこには必ず署名がしてあって、これは新聞の意見じゃないよ、このジャーナリストの意見だよ、ということになっています。しかしBildにおいてはその新聞=意見というのが徹底されていて、それは「新聞が意見を持っている」ということであり、逆を言えば、その思想に沿った意見のみが載っているということで、例えばカーンをかばうんだったら絶対に絶対に悪いことは書かないよ、どんなことをやつがしてもかばうことしか書かないんだよ、とか、そういうのが徹底してコントロールされているということなのです。

で、それを、巧妙なやり方で隠している。大衆が読んだときに、まさかBildが右保守であるなんて気づかないように、アメリカを支持しているとは分からないように、あたかもそれが「真実」のように見せている、それがすごいことであると思われます。Bildがドイツのほとんどの人が読んでいる新聞、Bildしか読まない人がいる国、当然、そこに書かれていることだけが真実で、なされていない報道については知らないまま、ということが起こるのは当然のことでしょう。

ドイツの思想は、このBild紙が一手に引き受けているということなのです。彼らの手にかかれば、四角のことを丸と国民に信じ込ませることも朝飯前だし、共通した分かりやすいイデオロギーを植えつけ、いとも簡単に気づかれないうちに右保守の思想に人々をさせることに成功しているわけです。

そしてそのやり方というのがまたアレで、その、実は支持している保守派の政治家やアメリカについて、批判的な言動があった場合、Bildでは一切の報道がされません。他の新聞では大々的に取り上げられている、イラクで民間人に犠牲が出たとか、そういうことだって報道していません。

そして、彼らにとって都合のいいことが起こったときだけ取り上げ、手放しで褒め称えるそうです。

例えば、Bildは今後イギリスにその事業を拡大しようとしているのですが、これまたドイツとイギリスは長い歴史の中怨念の仲だというのにも関わらず、昨日のイギリス対ポルトガル選でのイギリスの敗退について、ひたすら「なぜ?どうしてイギリスが敗退?なんて残念!ああなんて!」なんてな風に取り上げており、ポルトガルについては一言も書かれていないのだそうです。そういうところからも、今Bildが世論になにを求めているのかが顕著に分かるのです。

他にも、サッカーのことだと、例えばカーン(日本の金利が膨大な金融会社のCMに出たことがドイツで非難されている)とルーディについては、他の新聞が良い報道も悪い報道もしている中、Bildは徹底していつも同じ賞賛の立場をとっており、場合によっては事実をちょっとだけ隠蔽したりもして取り上げています(お金でも貰ってるのかな)。

もう一つ興味深いファクターなのは、Bild紙上で、エロスが日に日に充満しているということについてです。

エロスというのは、一般大衆に食いつかせる格好の餌ですよね。しかし、ここで矛盾が生じます。B右保守というのは、エロスの逆、保守キリスト教であって、それってのはつまり、お化粧とかセクシーな服装だめ、中絶禁止、男女交際の禁止(代わりに結婚しないといけない)、天地創造信仰(本気で進化論を否定している)、などであり、(ブッシュ支持の人たちのバックグラウンドがそれ)エロスの描写とは矛盾の関係にあるわけです。

しかしBildはそれを一つの道具として用い、食いつかせて飼いならした後、彼らの本望である思想を提供する、というやり方をとっているということです。巧妙ですよね。あるキリスト保守の政治家がBildは大変に宗教的立場をとっている新聞であると評価しているそうです。

(エロスの露出には、少子化対策という利点もあります。ドイツはドイツ人の子供よりもイスラム教下子沢山トルコ人などの子供の数の方がずっと多くて問題になっている)

これから、実際にBildでどんな報道のされ方がしてるか、取り上げてみたいと思います。

世の中って本当におもしろい。私は世界の動きについて知る、どうしてそう動くのかを知ることがとても好きです。






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